résumé 1970-2016

カテゴリ:詩( 99 )




aditus

二つの目をしかと見開いて
これまで見なかったものを見よ

二つの耳をしっかりたてて
聞かずに済ませた雑音を聞け

ツンとすました鼻で世俗の悪臭を嗅ぎ
その細い指で澱んだ水をも掬え
可愛いその口には腐りかけの肉を銜えよ


空疎な言葉を語りだす前に
長い眠りから目覚めよ
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by murasakitsukumo | 2005-06-16 16:07 |

再会

まるで 高いビルから
飛び降りるような気持ちで
そのとき送信ボタンを押したのです

無表情なモニター画面には
わたしの狼狽をよそに
送信完了の冷たい合図

ふるえる手と動悸の生々しさが
デジタル信号のあわいに浮きたち
ピエロのように おどけて笑った

臆病風に吹かれる前に
飛び降りてほんとうによかった
もし二度目にも逃げていたら
あなたにはもう出会えなかった

あの一通のメールから
わたしたちの物語は
ふたたび始まったのでしょうか
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by murasakitsukumo | 2005-06-14 16:16 |

c'est un miracle!

限りなくあるかにみえる 幾筋もの道
わたしは迷い子のように
ただ ただ流されて 此処までたどり着いた

人はこう教える
 目標を持って生きなさい

そういわれるたびに悲しくなった
目標をどう持てというのか
生きる目的さえもわからないというのに
ほんの先にだって 何も確かなことなどないのに

信じられることは 瞬間にわたしが在り
時間は過ぎいくということだけ


ただ流されてきたけれど
わたしの通ってきた道は
たったひとつの いま、此処、に通じていたんだと
振り返ってはじめてわかるもの

流されてきた此処が あなたのいる此処で
あなたのいない何処かではないことが
わたしにとって たったひとつの奇跡
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by murasakitsukumo | 2005-06-13 02:03 |

嫉妬

わたしの愛する人がわたしではない何者かを愛することに嫉妬を感じるならば わたしは嫉妬に狂って死んでしまうだろう なぜなら わたしの愛する人は多くを愛する人だから 愛を与えるために生きている人だから

それでも わたしを愛するのと同じように わたしではない何者かを愛せるならば わたしはその人を賞賛しよう もしかしたらほんとうの愛とはそういうものかもしれないから

愛は所有を希求する? それとも解き放つもの?

わたしは多くを愛する人を愛す できれば誰よりもその人を強く愛することを願う この願いこそがわたしの嫉妬 わたしが与える愛が特別なものであることを願う これこそが醜い嫉妬

激しく愛するゆえに 愛する人の持つ時間を渇望する 離れ離れのままに過ぎてしまう時を恨みに思う これはまさしくわたしの嫉妬 愛する人の時がわたしのために流れないことに失望する これこそがわたしの醜い嫉妬
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by murasakitsukumo | 2005-06-10 13:50 |

まだ見ぬ弟へ

まだ見ぬ弟
最先端の科学がこの世界に君を送り出した
君の生まれたこの時代こそが君の母であり、父
誰をも恨むことなかれ

まだ見ぬ弟よ
なのに、君の瞳は限りなくわたしと似て、
髪の色も 流れる血の色も
互いの恋人より近いだろう

幼い君の心に
この世界は美しく映っているだろうか
君をとりまくものたちは
悲しいくらいに疲弊に満ちていて
そうと気づくには君はあまりにも幼い

まだ見ぬ弟へ
君の戦いを遠く離れて感じとるのは
かつて君と同じ瞳に少しの疑念と怒りを浮かべた
三〇年後の幼い少女

小さな鼻孔で甘い果実をかぎわけ
美しい世界への予感を手にしたら
迷うことなく塵のなかから飛びたってごらん
なんにもないと思える空こそが
君の生きるほんとうの世界だから
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by murasakitsukumo | 2005-06-07 01:00 |

表象

あの日はどこへ行った
幼い目が小窓から愛するものの姿を探した、あの日

あの日はどこへ行った
地面につぶれた毛虫を避けながら歩いた、あの日

あの日はどこへ行った
日焼けした腕が未熟なリズムを刻んだ、あの日

あの日はどこへ行った
自分の中の冷え切った一点を見つけた、あの日

うまれ出た土壌にもう帰ることはない
何千万歩も離れたこの場所で
聞こえる
あの時のつぶやきが

もう二度と戻ることのないあの土を
手のひらでそっと撫でてみたら
感じた
あたたかな微熱を

時と空のむこうを
やわらかな布でふわりと包んだら
さよなら。
大切なあの遠い日
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by murasakitsukumo | 2005-06-07 00:33 |

永別の日に

三つの川を渡り 見知らぬ街を歩いた
かつてわたしが殺した父の生まれ変わりを探して
そして 迷子になった

生まれ変わりなどいないことを
わたしは始めから知っていた
だから 迷子になるために
今日ここへ来たのだ

ベンチから見あげた
汚れた窓の奥に広がる空間は
わたしの憎しみを少しもかりたてはしなかった

少しだけ開いた窓からそよぐ安物のカーテンが
わたしの目に哀しく映り

無造作に吊り下げられた窓外の衣類は
醜い怠惰と傲慢な表情をむきだしにして
わたしのささやかな好意を打ち砕いた

長く伸びた時の影をしまい 
わたしは帰る
迷子にならない自分の居場所へ
輝かしいものは何ひとつない
息苦しいこの街をあとにして

わたしは 父を殺してしまったのだ
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by murasakitsukumo | 2005-06-06 18:00 |

曖昧な恋

白か黒
1か0
OuiかNon
天か地
明か暗
「好き」か「嫌い」
「行く」か「行かない」
「言う」か「言わない」
「ある」か「ない」
生か死

曖昧なままにしておきたいほどに
儚く美しいものは、
あまりにも少ない。
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by murasakitsukumo | 2005-06-05 20:15 |

嘔吐

わたしのなかの
どうでもいい上澄みを、
公衆トイレで吐き出して、
今日という日をまた終える。

はらわたの痛みは、
いっときのこと。
流してしまえ、軽きもの。

空っぽの胃袋をたずさえて
確固たる足取りは
光ある世界に向けて
また一歩、踏み出そうとする。
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by murasakitsukumo | 2005-06-01 00:05 |

L'ame aussi,si elle veut se reconnaitre, devra regarder une ame (Platon)
by murasakitsukumo
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