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résumé 1970-2016

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共喰い

交尾を終えた蟷螂は
雌が雄を食べることも
あるのだという

カリカリカリと
頭を齧られて
勇ましい鎌も宙で止まる

大きな複眼に
哀しくも誇らしげな
男蟷螂の最期が映る

女蟷螂は泣きながら
カリカリカリと
男蟷螂の頭を食べている
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by murasakitsukumo | 2005-09-28 02:51 |

後悔

聞こえてくるメロディは
遠い日を呼び起こすのに
その日が現実だったのか
それは誰にもわからない

ここでお茶を飲んでいる
ひとりの女の生きた時間
歳の分だけ時は流れても
誰がその中身まで知ろう

ハイウェイを駈けるきみ
凪いだ海に向かい何想う
たぶん同じメロディ流れ
心をよぎる遠い日のこと

おなじ忘れ物がないかと
迫ろうとし掴もうとして
記憶をたどる男と女の顔
過去に見つけた一瞬の悔
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by murasakitsukumo | 2005-09-27 02:38 |

観覧車

更待月のかわりに
七色の大観覧車が微笑む夜
あのてっぺんなら
地べたからあれほど離れて
いろんなものが
消えて見えなくなるだろう
汚い路地裏 醜い気持ち
亜流の歓声 歪んだ笑顔
あのてっぺんなら
見たくないものなんて
私たちからずっと離れていくよ

時を知らせる大観覧車が
魔法を解く瞬間
はじめて気がついた
いま見えるざらつく映像
鼓膜を打つ荒々しいノイズに
どれほど嫌悪したとしても
人知れず煌く時が流れてもいることを
視界の裏側に隠れた麗し者たちを
私たちはそれを歌い尽くそうよ
つないだ手と手に
その希までを感じとりながら

更待月の見えない今宵には
ありふれた行ないも
不思議な子守唄を奏でては
鮮やかに移ろいゆくみたい
こころ安らかにして
重い首を持たせかけてみれば
その先には温かく新しい力に満ちた
頼もしい世界が待ち受けていた
遠く眺めるだけなら
まるで止まっているかにみえる
あの大観覧車のように
かすかに揺れながら動きを伝える
おおらかな掌が待ち構えていたよ
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by murasakitsukumo | 2005-09-25 02:36 |

ルーツ

自分の顔に
遠くに生きる人の面影を見る
垂れ気味の目尻は
間違いなくあの人譲りだ
他人以上に他人の血が流れ
たまに身の内で反乱を起こす
見知らぬ人ではないのに
何も知りえない生もある
この顔は年ごとに
雄弁に語るようになる
わたしが誰から生まれ
誰から離れてきたのかを
 *
故郷を持たない人もある
水草のように根をはらず
浮きながら漂う末の
行き先は誰も知らない
故郷を捨てる人もある
懐かしさより疚しさに
一度向けてしまった背中は
ほんとうは何を欺いたのか
 *
人はどこでも好きに生きられる
軽やかと見える矜持なき彷徨は
底なし沼へと続く
血色の沈子をぶら下げている
気づかないなら楽しかろう
どこで生まれ どこを歩き
いまどこで何をしているのか
一瞬にして映し出す水鏡を
粉々に打ち砕いてしまう前に
せめて揺らぎ薄れゆく影を
探そうともしないで
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by murasakitsukumo | 2005-09-21 01:47 |

既望

いざよふ月の下
心ばかりの夕餉
残るときを惜しみ
口に運ぶ手は重く
隠れた月を探し
遠回りする道
別れのためらひ
良夜を過ぎた
今宵の月のごと
袖濡らさず
欠けた丸笑顔で
君送り出す
更待月の逢瀬
心ときめきにしてf0068217_18565014.jpg
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by murasakitsukumo | 2005-09-20 00:46 |

初恋

わたしの名を呼ぶ
かすかな声に誘われて
真夜中の中庭に出てみたら
少年がひとりぽつねんと
頬を桃色に染めて
恥ずかしそうに俯いている

――名前を呼んだのは君?
彼はそっと顔をあげ
何も言わない代わりに
ほんの少しだけ睫を震わせた
右腕を胸の前で美しく交差させ
心臓のあるところに掌を当てて
まるで心のなかの溢れでそうな思いを
ぎゅっと押さえているみたいに

――君は誰?
でも、わたしは彼を知っている
いつどこで逢ったのかは知らない
それはどうでもいいことのような気がした
彼の深い色をした瞳を見つめていると
生まれたばかりの悲しみや喜びが
渦巻きの宇宙のように
大や小の爆発を飲み込みながら
無限に広がっていくのが見えた

――寒いからお入り
愛しさに一歩前に踏み出すと
少年はわっと飛びのいて
そのとき
流れる時間の色が変わってしまった
警戒とも蔑みとも絶望ともとれる
表情に一瞬顔を歪ませて
少年はくるっと背を向けて走り去った

わたしは喪ったものの大きさに
打ちのめされてしばし声もなく
ただ自分のつま先を見ていた
そしてそっと呼んでみた
少年の名を
そして不思議に思った
なぜ名前を呼ぶのだろうかとf0068217_1856126.jpg
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by murasakitsukumo | 2005-09-18 04:31 |

封印

人知れぬ想いにこそ
まことの色香あり
秘めごとの果敢無きに
永く連なる愛の形見ぞ宿る

はるけき旅路の空高く
有限の時に灼かれし詩人の魂
悔いも恐れもあるまじと
傷より深き決意の涙流れ落つ

大地に根づき無限に栄えよと
無数の言の葉 散り散らん
滝の奥 隠れたる洞窟に
全き想い出 輝けるまま封印す

流れる時に謐謐と眠りしも
言霊ひとり溢るるを阻むこと能はず
最期に書かれし永久の誓言の
見て取るは後世の新し恋びとたちf0068217_18545025.jpg
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by murasakitsukumo | 2005-09-14 00:34 |

carrier

ある日とつぜん感染した名も無き病
肉体に潜みつつ静かに増殖する細菌は
選び選ばれしふたりの媒介者
肉体と肉体をつなぐ愛の表現者
共犯の証を頑なに示す罪の体現者
どうして伝染を防げよう
病は知らずうちにわれらに巣食い
肉体と精神を極限に追いやるもの
細胞の隅々まで破壊するがいい
われらがともの病原に感謝しよう
愉楽の果てに罹る重い病ならば
たとえ朽ちようともその姿は
燦然と玉虫色に輝いているに違いない!
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by murasakitsukumo | 2005-09-10 23:44 |

抱擁

守るとはどういうものか
守られるとはどういうものか
わたしは知らず
ただ自分のからだを
自分の両手で抱いていただけだった
あまり長いこと抱いていたので
両の腕がしびれてしまい
麻痺してしまい
その形がわたしのからだになった
ほどけない両腕を
ほどくものはないか
わたしはずっと目を見開いていた
そうやって何年も過ぎた

守るとはどういうものか
守られるとはどういうものか
わたしは知った
守りたいものがあらわれたとき
ただからだじゅうの力を抜けばよかった
両の腕に血が通い
柔らかさを取り戻し
あまりに自然に宙に伸びていった
わたしの腕がわたしをではなく
守るべきものを抱いている
もっと大きな腕があらわれて
そんなわたしを包んでいる
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by murasakitsukumo | 2005-09-09 02:12 |

マザーリーフ

だあれも見ていなくても
静かに確かなことは進んでいく
つくられた優しさはいらない
母なる葉のように
ただそこにいて 
有るように在る
ただ水を吸って
為すように為すf0068217_18522760.jpg
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by murasakitsukumo | 2005-09-07 12:04 |

L'ame aussi,si elle veut se reconnaitre, devra regarder une ame (Platon)
by murasakitsukumo
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